言語・聴覚障害向け110番アプリ

■聴覚・言語障害と救護義務

電話での通話に困難がある方が自動車を運転を希望した場合、かつては、「救護義務を果たすことが出来ない」という理由で、免許取得や更新を許可しない、という病院がありました。

しかし、現在では聴覚障害であっても二種免許が取得可能であり、脳卒中などの後遺症で言語障害があっても「救護義務」を理由に運転を許可しないという判断はありません。但しそれには条件があります。運転者には最低限、事故の際に警察に通報することです。

■救護義務とは?

道路交通法第72条には「交通事故があつたときは、当該交通事故に係る車両等の運転者その他の乗務員(以下この節において「運転者等」という。)は、直ちに車両等の運転を停止して、負傷者を救護し、道路における危険を防止する等必要な措置を講じなければならない。」と定められています。この救護措置は、最低限「警察や消防に通報」することが条件です。つまり救護義務違反は、一般的にひき逃げに該当します。もちろん、通報するだけでよいわけではなく、ドライバーが出来る範囲で、けが人などを安全な場所へ移動したり、2次的な事故が起きないような措置もします。

■身障ドライバーと救護義務

体に障害があると、事故が起きた時にけが人を助けたり、救命措置をする、ということ出来ない人たちがいます。例えば車いすを利用する人であれば、具体的にけが人を救護することはできないでしょう。そういう時、身障ドライバーは何を感じるのか?当会の会員の中にも交通事故を起こしたことのある人はいますが、彼らに話を聞いてみると、「自分の目の前で人が倒れていたけれど、自分は車いす生活なので、何もしてあげられることがなく、じっとそばで救急車が来るのを待っていた。その時ほど、自分が何の役に立たない存在だと痛感したことはこれまでありませんでした」というものでした。彼は、警察や消防への通報をしましたので救護義務違反には問われませんでしたが、自分のふがいなさを目の当たりに経験しました。その事故の後、彼は「今後は絶対に事故は起こさない」という固い決を抱いて、ハンドルを握る前には必ず誓うそうです。みなさんは、是非そのような悲惨な経験をしなくて済むように、常に慎重な運転をしなくてはなりません。

■緊急通報アプリの利用

救護義務違反に問われないため、また、いち早くけが人などが病院で治療を受けることが出来るために、110番や119番への通報が不可欠です。

しかし、聴覚障害や言語障害等の影響で、電話での通報が出来ない人たちがいます。そういう人は、必ず「緊急通報アプリ」をスマホに登録しましょう。

スマホを持っていない方は買います。

■緊急通報アプリの登録方法

緊急通報アプリは、スマホアプリを利用してチャット形式で110番通報が出来るシステムです。2020年時点ですべての都道府県に設置されています。

登録の手順は以下の通りです。

1、アプリのダウンロード

アプリストアなどで「緊急通報アプリ」と検索し、写真のようなアプリをダウンロードします。

2、設定する

利用前に名前やメールアドレスなどを登録します。それ以外に必要な手続きはありません。

3、練習

アプリには練習モードがありますので、一度、試しに通報してみましょう。練習モードなら実際に通報せずに練習できます。事故は突然やってきます。それでなくても慌てるのは避けられません。事前に練習が必要です。

4、片麻痺などで、上手に通報できない場合。

片手でスマホ入力をするのは大変ですが、出来るように練習が必要です。リハビリスタッフ等に相談をして、リハビリに取り組みます。緊急通報が出来ることは免許取得や更新の最低限の条件です。

緊急通報アプリの詳細は警察庁ホームページをご参照ください。