運転補助装置の選び方

■運転補助装置の選び方

初めて運転補助装置を買うときは、結構戸惑ったり迷ったりすることが多いです。どこで注文するの?どれを選べばいいの?どうやって取り付けるの?など、心配なことがたくさんあります。

このページでは初めて運転補助装置を購入する方向けに、わかりやすくご紹介しましょう。

運転補助装置とは「自助具」+「自動車部品」

運転補助装置は、肢体不自由のある方が、その障害の部位や程度によって、自動車運転に必要な様々な操作を、健常者と同等に動かせ事が出来るよう、自動車に取り付ける部品です。

自動車の運転中は、障害者も健常者も運転者として同等の責任を負っていますので、健常者と同等の操作が求められます。

運転補助装置には、アクセルブレーキのペダルの操作を補う部品と、ハンドル操作を補う部品が主ですが、それ以外にも以下のような操作場面で必要となります。

ドアを開けて乗車する場面から始まり、運転を終了してドアを閉めるまでの一連の操作が、スムーズに行えることが大切です。

運転補助装置は自助具の一種ですので、同じ目的の道具でも、その形状の選択肢は実に多様です。

障害のある方は日常生活で様々な自助具を使うと思いますが、運転補助装置も同様に、様々な種類の道具から自分に最も合うものを購入することが一番大切です。

他方で運転補助装置は「自助具」でありながらも、自助具とは決定的に違っている道具でもあります。それは「自動車部品」であるということです。

自助具であれば、自分が使いやすければどんな形でも構いませんが、運転補助装置の場合はそうはいきません。それは「車検」の基準を満たしていないといけないからです。

自助具のように、市販品を改造したり、自作することはできません。必ず専業のメーカーと相談して、「使いやすい」+「車検に通る形状と取付位置」を見極めて選びます。

稀にですが、DIYで改造したり、知識のないお店で改造したりすることで、車検に落ちた。という相談が寄せられています。

ドアの開け閉め

特に右上肢障害や右片麻痺の場合、社外からドアを開けることは出来ても、閉めることが困難という方は少なくありません。ドアを上手に締められないと、路上駐車中の場合には後続車の邪魔になったり、ドアが風にあおられたりすると危険です。ドアを左手で開けられるような補助具がありますのでぜひ使ってください。

キーシリンダー・ウィンカー・ライト・ワイパーなどのハンドル回りのスイッチ類

エンジンをかける。ウィンカーやライト、ワイパーのスイッチを操作する。これらの操作は両手で行うことを前提に設計されています。従って、運転中に片手しか使えない場合は、何らかの補助装置が必要になります。これらのスイッチ類は、走行中に使う場面が多いですので、運転中でも確実に操作できる形状と取付位置が重要です。

オーディオ・ハザードスイッチ・エアコン・ドリンクホルダー・シフトレバーなどのセンターコンソール付近のスイッチ類

センターコンソール付近にも、様々なスイッチが付いていますが、左手に不自由があったりすると、スイッチを適切に操作できませんので、必要に応じて改造を行います。また、病気によっては頻繁な水分の補給が必要な方がいますので、運転中はペットボトルなどの飲料を無理なく飲めるよう、ドリンクホルダーなどにも工夫を行います。

アクセル・ブレーキペダル

両足に障害があって、足でペダル操作が出来ない場合は、「手動式」「手動運転装置」「手動装置」などと呼ばれている、手でペダル操作が出来る補助装置を取り付けます。

左アクセル

右足のみに障害があって左足が健常であれば、手動式を使わずにアクセルペダルをブレーキペダルの左側に移設する改造を行います

メーカーの選び方

日本で購入可能な運転補助装置メーカーは、国内メーカー2社、海外メーカー代理店2社の計4メーカーです。

それぞれのメーカーで使い心地や価格、アフターサービスが異なりますので、購入時は複数の会社へ相談することが重要です。

どこのメーカーも形が似ているので、どこでもいっしょ。と考えがちですがそれは違います。同じ手動装置や左アクセルでも、メーカーの違いによって運転できる人、出来ない人などが生まれます。

それでは、メーカー選びの注意点をいくつかご紹介しましょう。

車種に対応しているか?

装置メーカーによって、取り付け可能な車種が異なります。車を買ってから取付不能となると、取り返しがつきません。しっかり確認しましょう。また、装置だけではなくスイッチ類などの改造も装置メーカーによって対応がかなり異なります。

保証

通常、自動車本体には保証が付いていますが、運転補助装置の保証については、メーカーや代理店ごとに様々です。保証がないというところもあれば、1年保証、3年保証、何十年も保証がある会社もあります。運転補助装置は、自動車を改造して取り付けますので、製品そのものの強度の他、改造技術、スタッフの熟練度などが影響します。また、運転補助装置が壊れたりすると、交通事故に直結する危険が高まります。保証がある、長い期間設定されている、ということは、それだけメーカーは自信をもって販売していると言えるのではないでしょうか?重要な点は、メーカー単位ではなく、取付代理店ごとに保証規定が異なっていることがありますので、購入前に必ず確認が必要です。装置の故障、脱落など、あり得ないことですが、残念ながら起きています。

アフターサービス

購入を前提に電話などで相談した際に、自宅や病院まで出向いてくれる会社もあれば、こちらから出向かないといけない会社もあります。こちらから出向かないと対応できないような業者は余り親切と言えません。また、購入後には、自分の体形や障害の程度などによって、装置の取付位置等の微調整が必要になることがあります。このような時に無料で調整してくれるところと有料のところ、そもそも調整できないところなど様々あります。また、定期点検などの費用なども確認が必要です。(運転補助装置類は通常の車検では点検項目外になっていますので、都度装置メーカーで点検を受ける必要があります)

結局どう選ぶ?

もし、あなたが初めて運転補助装置付き自動車を買うのなら、自動車メーカー純正の運転補助装置が元々装着された自動車を買いましょう。自動車メーカーの自社製造なら、車検時の点検や保証制度など、自動車本体同様に扱ってくれるはずです。日本では、売るのは基本的に自由。だからこそ消費者がよく考えて選ぶことが大切です。よく、自動車メーカー製の補助装置自動車は、補助装置の位置調整が出来ないことを指摘する方がいらっしゃいますが、それは慣れの問題です。運転を始める段階からメーカー純正車を使えば問題はないでしょう。また、購入できる車種に限りがあると言われており、確かにそうなのですが、好きな形の自動車を選ぶか?安全で信頼できる自動車を選ぶか?よく考えてから購入しましょう。なお、日本の自動車メーカーの中には、自社製の障害者用装置が付いた福祉車両のラインナップが存在していない会社も残念ながらあります。そういう会社は障害者についてコミットしていない会社と言ってよいと思います。