手動装置の選び方
手動装置には主に「フロア型」と「コラム型」、そして「リングタイプ」の3種類あります。
①フロア型
一番普及しているタイプです。免許センターのシミュレータにも採用されていますので、このタイプを購入するケースが多いです。利点としては、手動レバーが体の左側(輸入車なら右側)にあるので、運転中の座位保持の支えとして、丁度よい位置にあります。欠点としては、特に近年は取付できない車種が増えている、足元スペースが狭くなる等があげられます。フロア型の手動装置を選ぶ最大のポイントは強度です。特に前後方向ではなく左右方向に力をかけた場合にも、ぐらついたりしないものを選びます。手動装置ユーザーの多くが両下肢に障害がある人たちですが、これらの方々は、運転中に座席から転倒しないように、常に右手のハンドルと、左手で手動レバーを手すり代わりにして、体を支えなければなりません。従って、手動レバーの横方向の強度(剛性)は非常に重要です。
②コラム型
ハンドルの下にバイクのハンドルのように横向きに付いているタイプです。このタイプはフロア型が取付できない場合や、昔からこのタイプを使い続けている人などが主なユーザーです。利点としては、足元スペースが限定されにくいこと。ハンドルとレバーの位置が近いことなどです。但し車種によってはハンドルのチルト機構が使えなくなることがあるようです。なおコラム型に慣れている方が、いきなりフロア型を運転することはかなり難しいと言われています。
③リング型
リング型はアクセル部分だけがハンドル外周に沿ってリング状に取り付けられており、リングを前方へ押すことで、アクセルを操作できます。ブレーキ部分は一般的に「コラム型」となっています。利点として、アクセルとブレーキが分かれていますので、アクセルと踏みながらブレーキをかける、等の操作が可能になります。また、多くが電子制御のアクセルとなっているため、取り付け車種の幅は多くなります。*写真はプッシュ式。
手動装置のグリップ
手動装置のグリップ部(握る部分)は、カタログなどを見ると1種類か2種類だけ載っているようですが、グリップの形状は、障害の状態や筋力、好みによって位置や形状向きなどが選べるようにっています。特に手首の位置や向きは、操作性に影響を与えます。例えば通常グリップを握ると手の甲が上を向きますが、人によっては手の甲が外側に向いていた方が使いやすかったり、逆に内側に向いていた方が良いなど多様です。自分に会ったものを選ぶには、購入前に一度現物を触ってみることをお勧めします。多くの方が、退院して一日でも早く運転したいと考えるので、何でもいいから手っ取り早いものを付ける、ということをしがちですが、それは間違っています。
旋回グリップの選び方
ハンドルを片手でスムーズに回すことが出来ように取り付ける装置です。「スムーズに回す」こととは、一般の運転ではなく、危険を回避しなければならい場面において「スムーズに」ということです。健常な頃から右手だけでハンドル回していた人も多いかもしれませんが、そういう人でも緊急時には両手でハンドルを回すものです。最近は免許条件として「旋回装置」が指定されることも多くなってきましたので、限定が付いたら取付は義務となります。旋回グリップには、脱着不能なものと可能なものがあります。健常な家族などが運転する可能性がある場合は、必ず脱着可能なタイプを選びます。グリップを付けたままグリップを使わずにハンドル操作を行うと、グリップと腕が干渉して、ハンドルから手が外れてしまいます。
座位保持に難のある両下肢障害や片麻痺のドライバーは、座位保持のための支えとして旋回グリップを使います。従って、健常な頃よりも大きな力がハンドル(旋回グリップ)にかかります。ほとんどのユーザーは、片手でハンドルを保持する際、ハンドルを前方に押すような力の掛け方をしますので、旋回グリップの銘柄などによっては取付強度が不十分で、旋回グリップが動いてしまったりズレてしまったりすることがありますので、製品選びには注意が必要です。
左アクセルの選び方
左アクセルは、免許条件としては「左アクセル等」と表記されていることが多いです。この「等」には、以下にご紹介する「ワンペダル式」なども含まれています。左アクセル装置はどのメーカーも2種類から選択するようになっています。左アクセルでの運転は、極めて難しい操作です。この2種類のうちどちらを選ぶかによって、慣れるまでの期間や、初期トラブル(踏み間違い事故)を減らすことにつながるでしょう。ポイントは「健常者の頃に使っていたペダルと同じ構造」の物を選ぶという点です。まずは、自分が運転していた車のペダルがどんな構造の物だったか確認します。
多くの方が値段につられてオルガン式を買うことが多いですが、日本車の多くは吊り下げ式です。過去に日本車を乗っていた方は注意しましょう。
①吊り下げ式
アクセルペダルが車体上部からぶら下がっている形状のものを吊り下げ式ペダルと言います。多くの日本車は元々吊り下げ式のペダルが付いていますので、健常な頃に吊り下げ式ペダルを使っていた方は、左アクセルも吊り下げ式を選びましょう。
②オルガン式
アクセルペダルが車体の床面から立ち上がるように取り付けてあるのがオルガン式ペダルです。このペダルは輸入車などに多く採用されている形式です。健常な頃にオルガン式ペダルの車を運転していた、という方は、オルガン式左アクセルを選びましょう。
③ワンペダルなど
近年、ペダルの踏み間違いを抑止するためにワンペダル式というペダルが流通しています。元々健常な高齢者向けの製品ですが、もしあなたの、免許条件に「左アクセル等」と記載されているならば、ワンペダル式の左アクセルを選ぶことが可能です。なお、当会の会員にこのペダルを使っている人はいませんので、使い心地などは不明ですが、国土交通省の資料(健常者向け)によるとナルセペダルについて、「通常のアクセル操作の方法が異なるため、本装置の操作には一定の習熟が必要です」と記載があります。