当事者・家族向け/運転免許の取得と更新

運転免許と安全運転支援センターは、これから身障ドライバーになる人たちと、それを支援する立場の人たちへ向けて情報を提供しています。

昔は、入院中や自立訓練の施設が当事者同士の情報交換の場を担っており、運転を含めた自立生活に役立つ経験や知識を仲間に伝えてゆく場として機能していましたが、現在の医療福祉制度においてその機会は失われつつあります。従って運転することにどんな利点がありどんな欠点があり、どんなことに注意が必要なのか知らないまま、運転を始める人が増えています。運転免許と安全運転支援センターでは、実際の当事者の声をベースにして、これから運転を始める人たちへ向けて情報を提供しています。また、障害者の運転について「支援者」という立場の人たちへ向けても、どういう情報を当事者へ提供したらよいか、という点から重要な事柄が書いてあります。

夢を実現することがすべてハッピーになるわけではない。効用とリスクの両方を考えた上で自分の責任で最適な選択をしよう。

障害者にとって自動車を運転できるようになることは「一つの夢」であり、夢である限り、そう簡単に事が進むわけではない高いハードルがあります。特に支援者の立場の人たちは、そのような当事者のニーズにこたえたいという気持ちを持っていますが、夢を実現させたことでかえって本人に不幸をもたらすことも十分あり得る、という前提を踏まえておくことは大切です。私たちも毎年何千人という方をサポートしていますが、そのすべての方が夢を実現できたわけではなく非常に少数であること。また実現できた方の中には大きな事故を起こして刑務所に入っている人さえいるのは事実です。支援者はどうあるべきか?簡単に答えが出る問題ではありませんが、支援者の仕事はビジネスではありませんので、需要と供給の関係とは無縁であるべきです。つまり、患者のニーズに応えるだけが支援ではないということです。こういう前提を踏まえてこの先のページへすすでもらいたいと思っています。

本人の自覚がなければ、障害者の自動車運転は絶滅する

近年、規制が強化されている高齢ドライバー。一部の高齢ドライバーの事故が大きな社会問題になることで、結果として、高齢ドライバー全体が大きな不利益を被っています。高齢ドライバーの全員が危険な存在ではありません。危険な運転をするのはごくごく一部の高齢ドライバーでしかありません。この一部のドライバーの自覚のなさと、高齢ドライバーと括られる人たちの「自分は大丈夫・関係ない」という姿勢が、結果として、高齢ドライバー全体の首を絞めているのです。

障害のあるドライバーも同様です。安全な運転に絶対欠かせない要素は「自覚」です。「自分は大丈夫・関係ない」と思っていると、そのうち高齢ドライバーと同じ道を進むことになるでしょう。すでにそのような方向において、各種の施策が始まっていると当会は危惧しています。あなたの起こした一件の事故が、結果として障害者全体から免許を取り上げることになってしまう。こういう時代にならないための情報発信です。