送迎車の事故(シートベルト編)

「障害者だから仕方ない」は許さない。
デイサービスなどの介護施設における送迎サービス中の自動車事故が社会問題となっていることをご存じでしょうか?特に送迎時に車いすのまま乗車する患者や利用者が、事故に遭った時に他の乗員よりも重傷化することは知られており、もう十年以上前から問題となっていました。しかし、話題にはなっても実態について把握することがなかなかできなかったり、解決策を見つけるだけの自動車に対する専門性を有する関係者がいなかった。また行政機関も中々動かなかった。このような事情があって、事実上放置されていた。黙認されていたというのが実情です。特に送迎車は法律上自家用車の扱いになっており、事故件数はいわゆる自動車事故件数の中に埋もれてしまっています。他方でバスやトラック、タクシーなどの事業用自動車、いわゆる緑色のナンバープレートが付いた自動車は、一般の事故とは別に事故統計を作っています。つまり送迎とは、事業者が他人を運ぶ行為でありながら、事業用自動車とは区別され、かといって一般の自家用車とは言えない、という中途半端な立場におかれています。このことが根本的に送迎時の自動車事故を見えにくくする要因の一つだったのですが、2025年7月、消費者庁がこのような事故の増加を受けて、事故の原因究明のための調査委員会を立ち上げました。私たちは調査開始の決定を行った消費者庁に敬意を表し、合わせてその調査の推移を見守りたいと考えています。
車いす利用者が何故重症化するのか?それには大きく2つの要素が関係していると言われています。一つはシートベルト。2つ目が車椅子の固定。つまり自動車と車椅子をどうやって固定するか?です。そして私たちは特に車椅子の固定「固縛」に着目しています。
①シートベルトについては、そもそも道路交通法71条で
「疾病のため座席ベルトを装着することが療養上適当でない者が自動車を運転するとき、緊急自動車の運転者が当該緊急自動車を運転するとき、その他政令で定めるやむを得ない理由があるときは、この限りでない。」
と定められており、さらに政令では
「負傷若しくは障害のため又は妊娠中であることにより座席ベルトを装着させることが療養上又は健康保持上適当でない者を自動車の運転者席以外の乗車装置に乗車させるとき。」
と記載がある通り、車いす利用者は必ずしもシートベルトを着用しなければならないわけではありません。シートベルトとは、本来、事故時の車外放出や、前方窓ガラスへの衝突を回避するための装置であり、走行中に揺れる身体を支えるものではないのです。従って、車いす利用者が車いすごと乗車する場合は、無理をしてまでシートベルトをする必要はありません。
しかし、シートベルトをしなくて大丈夫か?と心配に感じる方も多いでしょう。そこで重要なのは「運転手」です。シートベルトを着用していない乗員を乗せている、という自覚。そのことで生まれるより慎重な運転。つまり安全運転を意識することが重要です。
しかし残念なことに、各種の送迎ドライバーは、必ずしもことさら安全運転に気を遣っているとは限らないのが現状です。私の経験からも実感として感じますが、まるで自分一人で乗って、いつもの買い物に行くような感覚で運転するドライバーがいます。
また、早く仕事を終わらせたい。次の送迎に間に合わせたい、などの気持ちから急いでしまう。さらに、ドライバーだけではなく、施設の運営側が、出来れば急いで仕事を終わらせてほしいと、考えてしまいがちなのです。。
例えば当会では、デイサービスの送迎ドライバーの募集に応募して、「自分は制限速度を超えて走ることは絶対しません」と面接で宣言した場合の、施設側の反応を複数調査しましたが、多くが「それでは困る」という返事と共に、不採用の判断を下しています。時間内に終えたい。早く終わらせたいという感覚は、自分の都合、施設の都合のほうが、患者の安全や快適よりも優先してしまう。本末転倒な状況にあります。もう一つ付け加えれば、これは本当に最悪な施設ですが、ドライバー同士が「誰が最初に帰ってくるか競争している」こんな施設さえ存在するのです。
これではいつまで経っても事故は減らないでしょう。
当会が主張したいことをまとめると以下のようなものになります。
①シートベルトよりも、ドライバーの安全運転を考えるべき。
②事故は避けられない、という施設側の認識を改めるべきだ。
③ドライバーの選定をよく考える。
④安全運転とは何なのか?考えるドライバー教育。
施設を運営する皆さん、今所属する送迎ドライバーにきいてみましょう。
「あなたは安全運転していますか?」
そして「はい」という返事が返ってきたら、
「では、安全運転とは何ですか?」
安全運転とは、過去の実績ではありません。これから先についての運転を考えることなのです。
次のブログでは、車椅子の固定(固縛)について考えます。
理事長