運転再開後の運転状況アンケートの注意点

 理事長の佐藤でございます。

 

近年、運転再開後の患者が実際に運転を継続しているかや事故歴などをアンケート調査する医療機関の発表を目にすることが増えてきたように思います。

先日もある発表会で、アンケート調査についての発表をいくつか拝見させて頂きました。

運転再開後にどのように運転をされているのか?について医療機関が関心を寄せ、実際に調査することの意義は大変大きいと感じますし、ある意味勇気ある行動だと感服します。

 

しかし、発表の内容を見てみると、これが真実の結果なのか疑問に感じます。私の経験からくる印象や当会の行ったアンケートの結果と比較してもやはり乖離が大きいように思います。

私も当事者会員に対して何度も同様のアンケートを取ったことがありますが、アンケートの手法を工夫するにつれ、違う結果が出るようになりました。

違う結果とは、具体的には「運転再開後の自動車事故の有無」です。

そこで、私が行ったアンケートの経験から、当事者からより正確な情報を取得するための条件を皆様にお伝えしたいと思います。

 

前提)

まず、人間は誰でも、自分が自動車事故を起こしたという事実を他人に告白することはない。ということです。

私も皆さんも同様だと思います。自動車事故を起こすということは基本的に恥ずかしいことです。よほどの理由がなければ他人に事故履歴を明らかにすることはないでしょう。家族にさえ隠しておく、ということも珍しくはありません。

 

また、アンケート調査の実施主体が自分が診断書を書いてもらった病院であるならば、事故履歴を言いたくない、という気持ちはなおさら強くなるでしょう。

なぜなら、事故を起こしたことを告白すれば、医療機関からは「運転をやめるよう」言われるに違いない、と恐れているからです。

無記名のアンケートであっても、それが本当に個人を特定できないアンケートなのか?当事者は不信を感じます。

この前提を克服可能なアンケート調査の在り方がどのようなものなのか?明確なフォーマットはありませんが、当会では以下の対策をとっています。

 

対策)

調査目的
調査の目的がどのようなものなのか?回答者にとって最も重要なファクターです。単に運転再開後の運転状況を知りたいだけなのか?回答することが本人の利益につながるのか?不利益につながるのか?本人のみならず将来生まれてくる身障ドライバーの利益に資するものなのか否か?回答にバイアスがかからないように配慮しながら最大限の説明が必要です。
個人の特定
個人が特定されることが決してないことを確約することが大切です。直接の聞き取りや郵送による回答では誰が回答したかわかってしまいます。また筆記式の場合も当事者は本人特定を恐れます。
アンケート結果が本人に与える影響
アンケートに事故歴ありの回答をした際に、後日医療機関から「運転を控えるよう」に言われたことがある方や、「免許を返納するよう」助言を受けたという方からの相談があります。回答によってこのようなことが絶対に起こることのないような調査が不可欠です。
信頼関係
このようなデリケートな内容のアンケートを行う際には、アンケートの文面よりも、医療側と当事者との深い信頼関係が構築されていることが前提です。医療機関の運転支援チームは、定期的な本人ケアや連絡などに心がけ、日ごろから信頼関係を構築する努力が必要です。
家族へのアンケート
本人及び家族に同様のアンケートを行うことがありますが、この際は、本人向けと家族向けのアンケート手続きの手順を分けて行うことが大切です。郵送の際には別々の封筒に入れて別送したり、聞き取りの場合は本人と家族を同席させないなどの配慮が必要です。
事故の定義
「自動車事故」という言葉の定義は個人により様々です。人身事故であればだれもが「事故」と定義しますが、物損事故に関してはかなりあいまいな解釈です。壁や電柱、ガードレールにこすった、程度では事故とは呼ばない、という方もいらっしゃいます。アンケートを行うにあたっては、事故の定義を明確にすることが大切です。

臨時適性検査後に患者がどのような運転ライフを過ごしているかを知ることは、運転支援を継続的に行ってゆく上で非常に重要です。是非上記のような注意点に配慮し、継続的なアンケートが実施されることを当会は期待しています。

by 理事長

2019年03月12日