安全な自動車運転のために

安全な自動車運転とは、イザという時に事故を回避することが出来るか?が問われています。

なんでもない日常の運転で、安全運転が出来るのは当たり前。

急ブレーキを踏まなくてはならない、急ハンドルを切らなくてはならない等、緊急回避操作をしなければならない場面は、

長い期間運転をされているベテランドライバーの方であれば、すでに何度か経験されているはずです。

今後も、そのような場面は必ずやって来ます。

そんな時、健常者と変わらず回避操作が出来ることは、身障ドライバーの義務といえます。

道路へ出てしまえば、「病気があるから・・・」「障害があるから・・・」という理由は通用しないのです。

このページでは、私たちが相談を受け、実際に当事者たちから聞いた経験を基に、これから運転をされる方への「安全運転のために出来ること」についてご紹介いたします。

運転中の座位保持が最重要の課題です

特に障害がある方にとって、自動車運転の最大の課題は、運転中に座席にきっちり座っていられるか?という点に尽きます。

自分は座ってるから大丈夫。という方もいらっしゃるでしょうが、

事故を回避するための回避操作(急ブレーキや急ハンドル)時にもきちんと着座姿勢を保てるという方は居ないのではないでしょうか?

実際にすでに運転されている両下肢障害や片麻痺の方の多くが、運転中の着座姿勢の維持に不安を抱えています。

不安を感じる場面としては、以下のようなアンケート結果があります。
 ■ 緊急回避時
 ■ 交差点での右左折時
 ■ 高速道路のインターチェンジでの大回りのカーブ
 ■ 山道や峠道のカーブ
 ■ 未舗装路などのでこぼこ道

 このように、体が前後左右に振られる際に体が傾いてしまうことに不安を感じています。

また、多くの方が、免許取りたての時期や運転再開スタート時期に、助手席側に倒れた。足元のペダルスペースに滑り落ちた経験を持っています。

身障ドライバーにとって、体が倒れないように支えることが出来るのは、手動運転装置やハンドルを強く掴むことだけですが、

手動運転装置やハンドルは、操作のために常に動かす物であり、実際の場面ではあまり役立ちません。

私たち身障ドライバーは、健常者のように両足で踏ん張ることは出来無いのです。

体が倒れないようにするために、ベテランドライバーは様々な工夫をしていますので、ご紹介します。

 ①クッションやタオルを使って体を支える。
下の写真のように、座席と体の隙間にタオルやクッションを挟み込むことで、ある程度座位保持を安定させることが出来ます。

②専用のシートクッションを使う

片麻痺や両下肢障害など方専用の座位保持サポートクッション「ユニバケ」は、当会が開発した当事者の意見を反映させた商品です。詳細はこちら

麻痺部や義足などを車体の一部と固定することの大切さと危険性

麻痺がある部位や、義足などは、車の動きに合わせて、グラグラと動いてしまいます。

例えば両下肢麻痺のケースでは、両下肢が本人が気づかぬうちに動いてしまい、足先がブレーキやアクセルペダルの下へ入ってしまうことがあります。

運転中、ドライバーはそのことに気づきませんので、手動装置でブレーキを掛けようと思ったら、ブレーキペダルの下に足がもぐりこんでいて、

ペダルが動かず事故を起こしてしまった。というケースは、数え切れないほど発生しています。

このような事が起きる前に、麻痺や義足の部位を、車体の一部(主にドアノブやシートの調整レバーを使って。直接車体に穴を開ける方もいます))と紐などを使って固定する方法があります。

固定すること自体、私たちもお勧めしていますが、大事なのは何を使って固定するか?です。

固定の方法によっては、緊急に車外へ脱出しなければならない状況(事故などによって非難しなければならない場合や車輌火災の危険がある場合など)で、

迅速な脱出を妨げるおそれがあります。

固定の方法については、マジックテープなど、簡易な構造で迅速に取り外すことが出来る方法で取り付けましょう。

事故時の救急隊のレスキュー作業で、車体と体が固定されていることにレスキュー退院が気づかず、救助に手間取った、という話も聞いています。

出来れば緊急時に第3者が理解できるよう、車体と体が固定されていることを表示することもお勧めしています。

レスキューを受ける時に、ドライバーの意識が無い、というケースは充分ありえるシチュエーションだと思います

体調管理

病気や障害は、その日の体調によって「状態が変化する」ということを多くの方が経験されていることと思います。

特に認知機能の低下などの障害や継続的な服薬をされている方は、体調変化は大きいかもしれません。

道路交通法にもあるように、「安全な運転が出来ないおそれのある体調の時には運転出来ない」ということを、よく記憶にとどめておくことが必要です。

ただ、仕事や様々な社会活動などへの責任感などによって、ご本人は、無理をしがちなのも現実です。

そんな時、見守ってくださる家族の存在は重要になります。

ご家族の方々は気苦労が多くなりますが、見守りと助言の気持ちを大切に、安全運転へ力を貸してあげてください。

明らかに体調が悪いと感じるときには、「運転はだめ」と言って上げてください。

運転再開者の運転スタートまでのプロセス

実際の公道で安全な運転を実現させるのに一番重要なことが段階を踏んだ練習プロセスです。

退院後すぐに障害を負う前のように運転する(通勤や業務等)ことはお勧めしません。

仕事に復帰しなければならない。早く自立したい。家族に迷惑を掛けたくないなど、様々とあせる気持ちになるものですが、

これから長いドライバー人生を無事故で過ごすためにも、是非参考にして欲しいと思います。

①まずは、車庫から車を出し入れする練習をしましょう。

手動運転装置や左アクセルなどの装置を装着しての運転は、慣れるまで本当に難しいものです。

今までの運転の感覚は役に立ちません。

ゆっくりと着実に車庫入れが出来るようになり、それが無意識に出来るようになるまで練習しましょう。

最初の車庫入れで失敗して事故を起こす方も居ますので、充分気をつけて。

②休日の早朝などを利用して少しずつ距離を伸ばしましょう。

はじめは自宅の周りを、その後、少しずつ広い通りを走るようにしましょう。

この時、あえて急な操作をしてみて、自分の体が不安定になることが無いか確かめてください。

しっかりと座席に着座できない場合は、前述の方法等で工夫し、運転中に体がぶれることが無いように調整しましょう。

③装置の調整

最初のうちは手動運転装置や左アクセル装置が自分の体形や可動部位に合わないと感じることがありますが、まずは数ヶ月間はその状態のままで使ってみましょう。どんな装置でも慣れなければ使いこなせません。

それでも合わない場合は、装置メーカーに調整を依頼しましょう。

④認知機能の低下が認められる方

運転中に注意がそらされるような行為はしないほうが良いです。(ラジオや音楽を聴く。同乗者と会話をするなど)

⑤同乗者

練習の際には、出来れば免許を持っている同乗者に同行してもらい、運転の様子などの意見を聞くことは大切です。

⑥動画で確認

ドライバー本人が、自分の運転の状況を客観的に知ることは意外と難しいものです。

そんな時は運転中の車の背後から別の車を使ってビデオ撮影し、運転終了後にドライバーに動画を見てもらうことは有効です。

練習場所

当会に寄せられる相談の中でも多いのが、「事前に運転の練習したいのですがどこで出来ますか?」という内容です。

当会では、出来るだけ事前の練習を重ねて上で、実際の公道での運転を再開することをお勧めしていますが、国内においてそのような練習場所は少ないのが現状です。

これまでの日本においては、病院は医療的なリハビリを、免許センターは免許のことを、装置メーカーは装置の販売のみを役割としていましたので、

実際の運転についてフォローするような仕組みはありませんでした。

しかし、身障ドライバーに特化したものでなく、一般のドライバーでも利用可能な施設を、身障ドライバーが利用することは出来ますので、以下に記載しましたので是非利用してください。

①教習所のペーパードライバー教習

教習車や自家用車で受講できる教習です。ほとんどの教習所で募集しています。車の持込が可能なので、運転補助装置が付いた自分の車で受講することが出来ます。

②免許センター内のコース開放

都道府県の免許センター内にある試験コースを、一般に開放する制度を取り入れている場所があります。

土日開放されていることが多く、免許センターのホームページ等で日程が公開されています。

自分の車を持ち込んでコース走行を行います。同乗者が必要で、同乗者は必ず免許取得者であることが条件となります。

上記以外にも、場所は少ないですが身障ドライバーに特化した練習が出来る施設があります。

本田技研工業が行っている「自操安全運転プログラム」は、身障ドライバーに特化した練習メニューを用意しています。

ホンダ自操安全運転プログラムについての詳細はこちら(本田技研ホームページ)をご覧下さい。

当会でも出張ドライビングレッスンを承っています。

ドライブレコーダの活用

万が一の事故の際、事故の状況を記録しておくことは、責任の所在を明らかにする有効な方法です。

事故の相手から「障害が事故の原因ではないか?」と言いがかりをつけられないためです。残念ながらこういう事例はたくさん発生しています。

出来る限りドライブレコーダー(前面の風景と、車内の風景の両面が録画できるタイプが望ましい)の取り付けをお勧めしています。

また、最近では、スマホアプリのドライブレコーダーや、同様の安全運転診断アプリもあります。

損保会社が無償で提供するアプリや、損保会社がアプリを使った運転診断を無償で行っている企業もあります。

このような便利な機能を利用して、楽しく安全運転に取り組むことがご本人の納得感を高め、長続きするコツといえます。